コラム

マネジメント・バイアウトとは?目的や仕組み、買い取り価格の決め方について解説

マネジメント・バイアウトとはM&Aの手法の一つで、会社の経営陣が株主から自社株式を買い集める行為です。全株式を買い取ったり、社内の特定の事業部門を買い上げたりします。経営陣だけで株式買い取り資金をすべて用意することは難しいので、資金調達のために投資ファンドと組んだり、金融機関から融資を受けて行うケースが多く見られます。

マネジメント・バイアウト(Management Buyout)を省略して「MBO」と呼ばれることもありますが、ピーター・ドラッカーの提唱した「MBO(Management by Objectives)」と混同しないよう注意が必要です。

マネジメント・バイアウトの目的

マネジメント・バイアウトを行う目的は、主に以下の3つに分類されます。

1.株式公開の廃止(非上場化)

株主は企業の成長よりも短期的な利益を求める傾向があり、程度の差はあれど上場企業はそれに応えなければなりません。加えて、株主の増加に伴い、さまざまな意向を持つ株主が増えると、だんだんと迅速な経営判断ができにくくなってしまいます。そこで、マネジメント・バイアウトにより非上場化すれば、経営者は株主の求める短期的利益追求型の方針に左右されることがなくなります。意思決定のスピードも上がり、抜本的な改革を行ったり、自由度の高い中長期成長戦略の実行に踏み込んだりすることができるようになるのです。

また、マネジメント・バイアウトによる非上場化は敵対的買収によるリスクをあらかじめ回避する目的としても有効な手段です。上場のメリットである事業資金の調達や知名度の向上を必要としない企業の場合は、思い切って上場廃止するのも一つの選択肢だといえます。

※敵対的買収について興味のある方は、こちらのコラムをご覧ください。

明日は我が身!もし敵対的買収を仕掛けられたら?買収防衛策について解説

2.事業再編

マネジメント・バイアウトは、いわゆるのれん分けとして、子会社を親会社から独立させたり、特定の事業部門を切り離したりするために行われることもあります。また、グループ企業に属している会社が、グループから離脱する際にもマネジメント・バイアウトの手法が用いられることがあります。

具体的には、親会社から子会社や一事業部門を切り離す際、その資本分の株式を新会社の経営陣となる人々が取得するのです。この場合、新会社は少ない資金で比較的簡単に独立することができ、親会社は事業整理と、株式売却による現金獲得とが同時に可能になるというメリットがあります。

3.事業承継

後継者がいない経営者が、社員に会社を譲る目的で、マネジメント・バイアウトを行うケースもあります。近年、日本の中小企業は深刻な後継者問題に直面しています。60歳以上の中小企業経営者の半数以上が将来的な廃業を検討しており、そのうち「後継者がいない」という理由を挙げる割合が約3割も占めています。その結果、M&Aによる事業承継が、中小企業の後継者不足解消の打開策として注目を集めています。

マネジメント・バイアウトによる事業承継は、信頼のおける社員に事業を承継できるので、社内や取引先の混乱も少なく、経営者としても安心して引退できるというメリットがあります。

※事業承継についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの関連コラムもご覧ください。

事業承継をM&Aで行うメリットとは

マネジメント・バイアウトの仕組み

では、マネジメント・バイアウトはどのようにして行われるのでしょう。一般的に、マネジメント・バイアウトでは経営陣が「SPC(Special Purpose Company)」と呼ばれる「特別目的会社」を設立します。「会社」といっても、資金の受け皿として一時的に機能するだけであり、いわゆるペーパーカンパニーのような存在です。

次に、経営陣の自己資金と、資金提供者である金融機関や投資ファンドからの借入金をSPCに集約させます。SPCはその資本を使って、対象会社(部門)の株式を既存株主から買い取ります。

そして対象会社(部門)の全株式をSPCに移行した後、SPCの子会社となった新会社とSPCを合併させ、マネジメント・バイアウトが完了します。 

マネジメント・バイアウトの株式買い取り価格設定

マネジメント・バイアウトを実施する際、経営陣はなるべく安く株式を買い取りたいと考えますが、反対に既存株主は高い価格で株式を売却したいと考えるのが通常です。実際に、低い価格を提示したために既存株主が買い取りに応じてくれず、マネジメント・バイアウトが失敗に終わるというケースも度々起きています。よって、株式買い取り価格は低すぎず高すぎず、経営陣と既存株主の双方が納得できるような金額を提示しなければなりません。

そのためには、まず対象会社の企業価値を適切な方法で算出する必要があります。企業価値の算出方法には、コストアプローチやインカムアプローチ、マーケットアプローチといった複数の方法があり、会社の状況によって適切な方法が異なります。わかりにくい場合や正確に企業価値を知りたい場合は、M&Aアドバイザーや税理士に相談しましょう。

※企業価値評価については以下のコラムで詳しく紹介しています。

バリュエーションとは?M&Aにおける企業価値評価の算定方法

マネジメント・バイアウトにおける留意点

マネジメント・バイアウトにはいくつかのリスクがあることも併せて覚えておきましょう。たとえば、全株式を買い集めたい場合に買い取りに応じない株主がいる可能性や、金融機関から融資を受けた場合はマネジメント・バイアウト完了後にそのまま企業の債務となる点、上場廃止になった場合は株式から資金調達ができなくなる点などに注意が必要です。事前に適正な買い取り価格を設定し、マネジメント・バイアウト後のキャッシュフローについてもしっかりと検討してから臨むとよいでしょう。

まとめ

マネジメント・バイアウトは、会社経営陣が自社の株式を既存株主から買い取る行為です。株式の非上場化、子会社や事業部門の独立、事業承継など、さまざまな目的で利用されています。企業価値をしっかりと見定め、既存株主も納得するような買い取り価格を設定することが大切です。

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